テコの原理で動く顎関節
歯は顎の骨に支えられ、顎の骨は咬筋などの筋肉によって動きます。そして、その動きを支えているのが顎関節です。これらが一体になって動いてはじめて口が開いたり、物が噛めるわけですが、この動きはテコの原理にたとえられます。
テコは動きを支える支点、力が加わる力点、力が作用する作用点という3つの点から成り立っています。この位置関係が変わることで、1級から3級まで3種類のテコができあがります。(*図「抜かずに治す矯正歯科49ペ−ジ)
1級のテコとは、支点を真ん中にして左右に力点と作用点があるテコです。私たちが日常的に使っている洋ばさみを思い浮かべてください。手に持つところが力点、歯が交差しているところが支点、その先の刃が作用点です。
2級のテコは、身近なものでいえばカッタ−です。刃のついている根元を支点にして、刃を握る部分が力点、根元から刃先までのあいだの紙を切る刃先が作用点です。
そして3級のテコは、2級のテコと作用点と力点が逆になります。このテコの原理を応用したのが、日本の和ばさみです。つまり手で握るところが支点、刃の交わるところが力点、刃が作用点になります。
これら3つのテコのうち、いちばん支点が丈夫なのはどれだと思いますか。それは和ばさみのような3級のテコなのです。テコ(はさみ)は、動きを支える支点が壊れないかぎり使えます。和ばさみは動きを支える支点にほとんど力が加わらず、切る作用の影響を受けません。ですから支点が壊れることもなく、いつまでも長持ちします。それに対して洋ばさみやカッタ−は、支点に力がかかるので壊れやすいのです。
顎関節はこの丈夫な和ばさみと同じで、3級のテコの原理で動きます。支点になるのが上下の顎をつなぐ顎関節、力点が顎を動かす筋肉、作用点が実際にものを噛む歯です。ですから顎関節は本来、壊れにくくできているのです。
ところがそれを壊すのが、歯並びの異常です。歯並びが悪くなることによって、本来のテコの支点である顎関節が支点の役割を失い、テコの原理が狂ってくるわけです。