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顎関節を立体的にとらえるSAMシステム

前にお話したように、この100年の歳月のなかで、医学医療は日進月歩の勢いで進歩してきました。しかし、こと矯正歯科の分野では、先に引用した佐藤教授の言葉にもあるように、苦難の日々が長くつづいてきました。不正咬合を起こす真の原因がつかめず、また、顎関節の機能を調べる有効な手法もなかったからです。

 

そのため顎関節についての理解は深まらず、顎関節症の治療も遅々として進まない状況でした。しかし、そうした状況を打開したのが、元ウィ−ン大学教授のスラバチェック博士たちです。博士たちが開発した「SAMシステム」(顎関節支援システム)によって、顎関節の機能が手にとるように分かるようになったのです。

 

歯科医療の先進国であるオ−ストリアでは、歯を単独でとらえるのではなく、全身との関わりのなかでとらえる研究で知られていますが、SAMシステムもそういう見地から開発されたものです。これは開発者のスラバチェック博士が、歯学者であると同時に医学者でもあるため可能になったともいえるでしょう。 

 

SAMシステムの中心的存在は「アキシオグラフ」という検査装置です。これはコンピュ−タを使って顎の上下・左右・前後の運動を調べるもので、20分間で20パタ−ンの運動記録を測定できます。これらを組み合わせながら分析すると、その患者さんの顎の動きを克明にとらえるとができます。

 

さらに、アキシオグラフと従来のレントゲン写真や歯型模型を組み合わせると、顎の動きが立体的にわかります。たとえばレントゲンで見るポイントと模型のポイント、アキシオグラフで見るポイントを同じところにとれば、1つのポイントを3つの角度から解析できます。つまり矯正治療に重要な顎や顎関節の動きがきわめて立体的に把握できるうわけです。

 

こうした総合的な検査システムが、SAMシステムです。このように、それまではバラバラに解析されていたレントゲンや模型が、SAMシステムによって機能的に結びつくようになりました。これは画期的なことです。また全身から顎の機能を見られるようになったことも、大きなメリットでしょう。これからの歯科医療は、全身医療のなかえ見ていかないと、真実の姿はつかめないからです。

 

SAMシステムの解析には時間がかかりますが、それだけに精度が高く、信頼性のあるものです。私もオ−ストリア・ウィ−ン大学で行なわれたスラバチェック博士ご自身による講習会に参加し、アキシオグラフの実習など具体的な手ほどきを受けました。そして、その精度の画期性に感嘆し、さっそくオ−ストリアからシステム装置を取り寄せました。日本の矯正歯科でこれを導入しているところが、まだ少ないのが残念です。

 

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