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“変人”扱いされる

矯正のため健康な歯まで抜くことへの疑問は、私にずっとつきまとうことになりました。先ほど話したように、大学を卒業してあとの半年間ほど、臨時の専修生として大学病院の矯正科に通っていました。

 

そのとき私は、指導教官に「先生、矯正のためにどうして健康な歯まで抜くのですか?」と、素直な気持ちで質問したことがあります。ところが教官は何も答えてくれませんでした。そこで「こんなにきれいな歯を抜いていいんですか?」と重ねて尋ねると、先生は私の顔をじっと見つめたまま、やはり何も答えてはくれません。

 

いたかつての級友たちも「抜歯して矯正すると、教科書にも書いてるじゃないか。そんなわかりきったことをどうしてしつこく質問するんだ」と、あきれ顔でした。しかし、子供の頃から自分自身で納得できないものは、どうしても疑問が残ったままです。そんな私は、まわりから“変人”扱いされるようになってしまいました。

 

一方、実際に診療にあたっていた浅見矯正歯科でも、当然のように抜歯による治療が行なわれていました。私自身もその方法しか学んでいませんから、その通りにやるしかありませんでした。2年ほどたって治療に慣れてくると、抜歯して矯正を終えた患者さんが、きれいになった自分の前歯を見て喜び、「先生、ありがとうございました」と感謝の言葉を口にします。それに接するたび、抜歯して矯正する方法が正しいような気持ちにもなりました。

 

ところが、感謝の言葉をのべた患者さんのうち、稀ながらしばらくして体に不調が出たり、再発したりしてまた来院する例が出てくるようになりました。矯正歯科医としての自分の技術の未熟さによるものかと考えててみましたが、どうもそれだけとはいいきれません。2年間にわたって毎日、何十人という患者さんをこなし、自分の技術には自信がもてるようになっていました。自分の技術だけに問題があるのではなく、「やはり健康な歯を抜くのはおかしいんじゃないか」という、最初の疑問が頭をもたげてきたのです。

 

大学での研修のときと同じように、勤務先の浅見院長にも、その疑問を相談してみました。浅見先生は進んだ考え方をもつ歯科医でしたが、私の疑問に対して「自分で考えてみなさい」というだけです。そこで、なんとか臼歯を抜かずに、あるいは抜くにしてもできるだけ数を少なくして矯正する方法を、自分なりに工夫してみました。

 

しかし、これがどうにもうまくいきませんでした。患者さんはきれいな前歯にしてもらいたくて来院されるわけです。従来の便宜抜去法は簡単で見た目にも、はっきりと効果が現れます。以前は歯を抜かない方法もありましたから、そんな文献なども調べましたが、考え方はともかく技術的に古くて、とても患者さんの要求に応じることはできません。

 

こんなふうに悶々としていた私は、矯正歯科医としての将来にも不安を感じ、もう一度基礎から勉強し直してみたいと思ったのです。

 

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