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将来の方向を決める

さて、話を本題の歯科の勉強に戻しましょう。当時の歯学部は6年制でした。1年時は基礎教養科目の勉強で、2年生から歯科関係の科目が入ってきて、しだいに高度な技術や理論を学びます。そして、最終学年の6年生になると、インタ−ン生として実際に患者さんの診察治療にあたるというふうになっていました。

 

先ほどお話したように、入学後すぐにテニス部に入り、練習の毎日でした。そのため、基礎教養の数学だの化学だのの試験となると青息吐息だったものです。2年になってテニスのほうはさらに本格的になり、例の“影の監督”も務めるようになったのですが、授業のほうはかえって楽になりました。

 

たとえば歯科工学などという科目があります。言葉はいかにも難しそうですが、なんのことはありません、子供の頃から父がやっていたのをいつも見ていた、その実習です。同級生が四苦八苦しているのを横目に、私はすいすいとこなしたものです

 

学年が進むにしたがって授業内容は難しくなりますが、私にとっては楽なものでした。たとえば補綴、つまり入れ歯を作る授業にしても、父や兄たちがやっていることを見ていて、ポイントをおさえていますから理解が早いわけです。理論面にしても、言葉は難解でも内容的には、子供の頃から見たり経験したことがもとになっていますから、テキストを一度読めばすっと頭に入ってきます。

 

こんなわけで、一方でテニスに熱中しながらも成績は学年が進むにつれ、上がっていきました。もっともこれは私自身の努力というより、歯科医の家に生まれ育った環境のおかげですから、あまり自慢にもなりません。

 

こうして6年生になり、いよいよインタ−ンです。現在の歯学部教育では、卒業して国家試験に合格しないと患者さんを診察することはできませんから、指導教官の診察治療を見学するだけです。しかし私の学生時代は、ライタ−と呼ばれる若手先輩医師の指導のもと、各科を順番にまわって実際に大学付属病院に訪れる患者さんの診察治療にあたっていました。

 

歯科の各科には「補綴」「保存」「矯正」「外科」「小児歯科」などがあります。補綴というのは先ほども少し触れたように、入れ歯とかブリッジとか被せものによる治療。保存は小さな虫歯歯槽膿漏などの歯周病を、神経を抜いたりして歯を保存する治療です。この補綴と保存が歯科のメインで、外科は抜歯、子供の患者対象が小児歯科です。矯正歯科は欧米などでは古くからありましたが、当時、日本ではまだまだ新しい分野でした。

 

これらの科を順次回って実際に患者さんの治療にあたりながら研修するのですが、矯正は技術的に難しく、ただ見学するだけでした。見ているだけではほとんど理解できなかったというのが正直なところです。

 

インタ−ン生としてこうして各科で研修しながら、その後の自分の方向を決めるわけですが、私が選んだのが矯正歯科でした。見学するだけでよく理解できなかった矯正を選ぶというのもおかしな話かもしれませんが、いまから考えてみると、これにはいくつかの理由があったと思います。

 

まず、私自身が外科的なことが生理的に嫌いだった点がありますが、当時はまだ低く見られていた矯正が、やがて歯科の分野で重要になってくるのでは、そういう期待のようなものもありました。さらにいえば、子供の頃から父が口癖のように「患者さんの歯をできるだけ残すのが歯医者」といっていたことが、矯正の分野でもできるんじゃないだろうかという、予感めいたものも感じていました。

 

こうして矯正歯科医の道を選択したのですが、それがいかにイバラの道であるかとは、当時の若い私にはまだ知る由もありませんでした。

 

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