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小臼歯のかわりは他の歯にはできない

スラバチェック博士による小臼歯の機能を私なりにまとめてきましたが、このように小臼歯には大事な役目があるのです。しかも、その役割は、他の歯では決して代用できません。

 

繰り返しになりますが、第一小臼歯のいちばん大きな役目は、先の項にも書いたとおり、「顎関節を守る」という部分です。第一小臼歯が後方へのストッパ−になることによって顎関節を守ると同時に、かみ合わせの基準点になり、下顎の安定をはかるっているのです。これによって正しい歯列が維持でき、顎もリズミカルに動くことができます。

 

第一小臼歯がストッパ−になるのは、下顎が一瞬下がったときにかみ合うことにより、うしろへの歯の動きをくい止めるからですが、このとき、他の歯は全部浮いています。これがよりよいかみ合わせなのです。ですから、もしも第一小臼歯がなければ、他の歯がむりやりかみ合うようになり、それによってさまざまなひずみを生じることになります。

 

たとえば、奥歯がかわりにストッパ−役をしたとしましょう。しかし、奥歯が当たると下顎の位置がずれて、顎関節を支えている靱帯や筋肉にひずみが生じてきます。顎関節自体もゆがみ、位置がずれて炎症を起こすようになります。また、その位置のずれが頭蓋骨内部のひずみにも結びつくという、思いがけないところにまで影響が波及してしまうのです。

 

いわば小臼歯は、前歯と奥歯をつなげる橋渡しのような存在です。この歯があるからこそ、前歯はあるべき形のカ−ブを描き、奥歯は大きな広い面積の咬合平面を形つくれるのです。

 

こうした小臼歯の役目を知れば、簡単に抜くことなどとてもできないはずです。もちろん小臼歯だけなく、どの歯が欠けてもかみ合わせは悪くなり、噛む機能も低下します。小臼歯には小臼歯の役目があるように、奥歯には奥歯の、前歯には前歯の役目があり、どれめも大切なものです。

 

このようなスラバチェック教授の理論を知ったとき、私は「やはり、健康な歯は一本も抜くべきではないんだ」と、思いを新たにしました。それはちょうど、私が抜かない矯正治療を求めて模索をつづけていた最中でした。便宜抜去で行なわれている健康な歯を抜くことへの疑問はさらに高まりましたが、じゃ、実際にどうすれば歯を抜かない理想的な矯正が可能なのか、それがまだつかめずにいました。そんなときに出会ったのが、佐藤教授でありキム博士だったのです。

 

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