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抜かない矯正の理論と技術を学ぶ

いま佐藤教授の文章を引用しながら、改めて運命の不思議さに思いをいたしました。佐藤先生は私よりひと回り先輩ですが、やはり私と同じように矯正歯科の現場で長いあいだ悩んでこられたのです。

 

あとで先生ご自身にうかがったことですが、先生は初めは神奈川歯科大学の矯正学教室から派遣され、基礎の生理学教室で研究しておられました。ところが、基礎研究を終えていよいよ臨床を担当するようになってみると、他の医師がずっと前に矯正治療した患者さんたちが、調子が悪くなってつぎつぎに大学病院へ戻ってくる。矯正歯科の世界でいう「後戻り」、つまり再発です。

 

どの患者さんも、第一小臼歯を抜いて矯正を受けた人たちばかりです。
そんな「後戻り」をしたたくさんの患者さんに接しながら、佐藤先生は過去のデ−タを全部調べてみました。そして、そこにひとつの共通項というか、法則を見つけたのです。つまり、どの患者さんも奥歯の並びに問題がありました。奥歯が倒れることによって歯列に問題がおき、それを第一小臼歯を抜く方法で治療したところ、やがて再発してくる。

 

ここから佐藤先生はさらに研究を進め、頭蓋骨や側頭骨、顎関節などと歯の関連を調べ、平面咬合、つまりかみ合わせが何より大切だという考えにいたりました。その咬合は個体によって、人によってそれぞれ異なりますが、基準はすべて中、頭蓋骨全体にあるということに気づかれたのです。

 

いいかえれば、見た目をきれいにするために歯を削ったり抜いたりするのではなく、きちんとしたかみ合わせをつくること、これが最も重要と考えたのですが、具体的に臨床でそれをどうやればいいのか、悩んでいるときに佐藤先生はキム博士と出会いました。博士の開発したマルチワイヤ−が、自分の理論を臨床に活かし抜かない矯正治療を実現できるものと考えたわけです。さらに、ウィ−ン大学のスラバチェック教授と出会い、その人間口腔学に触れ、より自分の理論に確信を持つようになったのです。

 

こうして佐藤先生の研究の足跡をたどっていくと、私自身がそれとは知らずに、先生のあとを右往左往しながらついていっていたように思えます。講習会で佐藤先生のお話を聞き、「これだ!」と思ったのも、私自身が悩みに悩んできたことを、ずばりと指摘されたからです。その意味でも佐藤先生との出会いは、私にとってやはり運命的なものとしかいえません。

 

私が初めて佐藤先生に出会ったころ、先生もまだ研究の最中でした。これまでもいったように、当時は教科書をはじめ「抜歯矯正」を当然とした歯科学教育が行なわれていましたから、大学というアカデミックな環境の中
で、ご自分の実践研究が十分にできなかったのでしょう。そのため外部で歯の技工士と組んで定期的な研究会を開催していました。

 

それを知った私は、即座にその研究会参加を申し込みましたが、すでに定員いっぱい。最初の講演会のときと同じように粘りに粘って、無理矢理その研究会に入ることができました。

 

それからというもの、週末の3日間、名古屋から横浜へ通う日々が始まりました。もちろん開業医の仕事をこなしながらですから、いま思い出しても大変な日々でした。しかし、当時の私はもう無我夢中、自分がずっと考え悩んできた、抜かない矯正治療を直接学べるわけですから、どんな苦労もいといませんでした。こうして佐藤先生から理論を学び、それにもとづく矯正治療の技術を技工士の方に教えていただきました。

 

もちろん、研究会に通うだけですべてが事足りるわけではありません。実際に患者さんを毎日診ているわけです。どの患者さんもその状態はそれぞれ異なっています。それに対応しながら勉強したことを活かすわけです。そうした努力をつづけたすえ、私はある日、患者さんたちにこう宣言しました。

「これから、私のクリニックでは一切歯は抜きません。抜かない矯正治療を行ないます」

 

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